離パ
30/54

4§1 離婚相談の入口料請求権を制限する立場から,外形上「別居」に至っていないでも,夫婦関係が「破綻」していると認定される場合があります(不貞慰謝料についてはQ38〜Q40参照)。イ 協力の関係婚姻生活は夫婦のそれぞれが協力することによって維持されるものであり,夫婦の協力義務は婚姻の本質的義務とされています。ウ 扶助義務協力義務は,夫婦関係が順調に営まれている場合の義務です。これに対して,一方が病気,失業などの困難な状態にある場合には夫婦は物質的援助,経済的援助をする義務があります。⑷ 離婚原因としての「別居」―「別居」=「破綻」≒「離婚」婚姻が破綻して回復の見込みがない場合,離婚が認められます(民770条1項5号)。一定の期間の「別居」があれば婚姻の破綻が擬制されます。なぜなら「別居」は「破綻」の徴表(メルクマール)と考えられるからです。同居義務は夫婦の本質的義務であって,協力義務や扶助義務を包み込み,外部に対して夫婦関係の存在を表している義務といえましょう。その義務が尽くされていない以上,夫婦といえる関係はもはや存在しないとみてよいということです。ただし,短期間の別居ではこのように考えることはできないので,一定の長さの「別居」が必要になります。一定の期間の別居があれば,特段の事情(有責配偶者の離婚請求など離婚を認容することが信義誠実の原則に反する場合は除きます。)がない限り,離婚が認められます。東京高判平成28年5月25日判タ1432号97頁は,「別居期間の長さは,それ自体として,控訴人と被控訴人との婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえる」とし,4年10か月余り別居している夫婦について離婚を認めています(「別居」=「破綻」=「離婚」)。どの程度での別居期間で離婚を認めるかについて,裁判所は,別居の年数だけではなく「別居に至る原因」を考慮して,信義誠実の原則(信義則)から離婚を認めるか否かを判断しています(『離婚事件の実務』74頁)。離婚される側の有責性が比較的高い場合,別居期間が短くても離婚が

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る