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ある夫婦が離婚すると,二人の今後の人生のみならず共に生活していた子ども達を含む家族全員の生活様式(ライフスタイル)が大きく変化することになり,それ故離婚をめぐる紛争(トラブル)は一般に深刻化する傾向にあり,例えば離婚後の面会交流や子の引渡しなどのように,いわば人生をかけた闘い(=「全身訴訟」)をせざるを得ないことになります。それに加えて離婚事件特有の問題として,離婚のプロセス自体,子どもの存在や生活状況などから,別居等でトラブルが表面化するまでの期間が長期になることが多く,離婚原因や婚姻破綻について,別居期間などの外形的な判断のみでは認識できないことが多々でてくることもあります。したがって,弁護士などが離婚相談を受ける際には,このような離婚の特質を踏まえて,相談がどの時点(別居前,別居後など)のものかにより対応が異なる可能性が出てくることを認識する必要があります(近年実務のみならず学会でも,離婚をプロセスとして捉え,当事者の生活実態のみならず,当事者の経験がその後の生活や価値観にどのような影響を与えたかを考察する研究がなされるようになってきたのは示唆的です)。21世紀に入り,わが国の離婚件数は減少傾向にありますが(2000年26.4万件から2020年19.3万件),婚姻件数は79.8万件から52.6万件と大幅に減少し,21年間の累計は,婚姻件数約1432万組に比し,離婚件数は約511万組と3組に1組が離婚(35.7%)し,「離婚率」は以前より増加しています(いずれも厚労省「人口動態統計(確定数)の概況」(2020年)より)。それに加えてこの間の離婚原因の激変に注目する必要があるでしょう。周知の通り,わが国の場合,協議離婚が大半であることから,離婚原因に関する正確な統計資料はないものの,司法統計(離婚申立人の主たる動機3個まで集計)では,2000年には,夫妻共に「性格の不一致」が第一位を占め(夫63%,妻46%),以下,夫側「異性関係」19%,「家族との人間関係」18%,妻側「夫が働かない,浪費する」39%,「身体的暴力」31%となっており,夫側は「性格の不一致」が大部分を占め,妻側は「経済的暴力」と「身体的暴iは じ め に

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