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力」が大きな比重を占めていました。しかしながら20年後の2020年調査では,20年前と大きく様変わりし,夫側の第一位は「性格の不一致」ほぼ60%で変わらないものの,妻側の第一位は「経済的暴力」40%,第二位が「性格の不一致」38%,「精神的虐待」25%と続き,夫側も20%となっており,夫妻共に「性格の不一致」といういわば漠然とした理由から,「金と暴力」へとより明確なテーマに比重が移ってきています。従来,家庭内での配偶者からの暴力,いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)はもっぱら身体的暴力に関心が向きがちでしたが,今日それにとどまらず,継続的に繰り返される精神的暴力により,被害者が心的外傷(トラウマ=心の激しい苦痛)を発症させ,否定的自己認知,感情の制御困難,対人関係上の困難といった症状を引き起こし,主体的な生きる力そのものがそがれていくことに注目が集まりつつあります。アメリカの精神科医J.L.ハーマンは,『心的外傷と回復〔増補版〕』(みすず書房,1999)で,「心的外傷とは,権力を持たない者の苦しみである」と述べており,ハーマンによって唱えられた複雑性PTSDは,2018年にWHOの国際疾病分類第11版(ICD-11)でPTSDと区別して概念化され,これまで暴力を受けた本人の人格の問題とされていた生きる意欲の低下が,実は疾患によることが明らかにされています。わが国でもこれを受けてDV防止法が近く改正され,例えば接見禁止命令の発令要件について,現行法では,「更なる身体に対する暴力により……その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」とされていますが(10条1項〜4項),改正法では「更なる身体に対する暴力又は生命・身体・自由44・名誉44又は財産44に対する害悪の告知により,心身44に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」とされて,精神的暴力・被害へと拡充される予定であることが注目されます(令和6年4月1日施行予定)。離婚に伴う女性の貧困も深刻な状態にあります。OECD(経済協力開発機構)によると,その社会の人々の平均的生活水準に比して,困窮する人々の割合を指す「相対的貧困率」は,「世帯の所得がその国の等価可処分所得(=「手取り収入」)の「中央値」の半分(=貧困ライン)に満たない人々の割合」とされ,わが国では国民の約6人に1人(15.4%)が,貧困ラインii

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