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(年収約127万円,2018年)以下にあり,いわゆる先進国クラブとされるG7の中ではワースト1(シングルマザー)となっているのです。離婚したシングルマザーは,一般に育児負担等故に長時間働くことができないことから非正規雇用となることが多く(約42%),更に元夫からの養育費不支給(約51%が「養育費について取決めをしていない」,取決めをしながら約57%が「養育費を受け取ったことがない」)が原因で,平均年収は272万円にとどまっています(シングルファーザーの平均年収は518万円)。このように離婚に伴う育児や経済的負担の大半は,女性が負うことになり,それに加えてDV被害などで離婚を余儀なくされたあげくの貧困にまで,自己責任だ!と片付けられるとすれば,結局は子どもを含む家族の貧困の連鎖を招来することにもつながるのであり,離婚に伴う貧困などのジェンダー格差の解消が検討されるべきです。ところで,離婚手続にはさまざまなメニュー(調停,審判,裁判)が用意されているにもかかわらず,わが国の場合,手続の簡便さや,時間,費用負担などを理由として,前述した通り,協議離婚の利用が圧倒的です(約88%,2020年)。しかしながら当事者間の非対称なジェンダー格差などから,子供の親権,慰謝料,財産分与などをめぐって,十分な協議がなされないままの協議離婚は,かえってシングルマザーの貧困を促進することにもなり,今日改めて法規範に則した離婚手続が求められていると言えます。本書はこのような状況を踏まえて編まれた書であり,各設問に挿入された一言アドバイスは,そのような趣旨に基づくものです。本書の内容上の特徴として,離婚相談に際して「別居」にフォーカスしたものとなっています。特に,当事者は前述のようなさまざまな事情から逡巡したうえで「別居」に至るのが一般的であり,いわば別居は離婚に至るジャンプ(飛躍)台―当事者にとっては「橋を焼き切る(burn your bridges)」行為であり,本書では,「別居」こそが夫婦関係の分水嶺と位置付け,それに基づいた設問をしています。まず,「Ⅰ 離婚相談の受任」では,相談の入り口(同居/別居,離婚請求したのか/されたのか,など)での相談者の心構えや離婚の基本手続,離婚原因の検討などが述べられ,「Ⅱ 別居前の相談」では,DV(精神的DVを含む)への対処や別居費用(婚姻費iii

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