第1節はじめに3 不動産訴訟に限らず,証拠は漫然と提出してはならない。そして漫然と資料を収集してもならない。そのためには,要証事実との関係で,収集しようとする資料あるいは提出しようとする証拠がどのようなものであるかを,その作成過程に遡って理解しなければならない。なぜなら,資料の証拠としての価値(証明力あるいは証拠能力も含めた証拠適格性)は,要証事実との関係で相対的に決まるものであり,一般的に定まる性質のものではないからである。証拠としての価値は,当該資料ないし文書がどのような作成過程を経たものであるかに依存する。 本書では,訴訟において証拠として機能する各資料が,訴訟類型ごとに要証事実との関係でどのような証拠価値を有するかについて,作成過程等にも触れながら述べていく。
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