51 不動産訴訟の特徴 そのため,不動産契約の場面では,通常,現地に赴き不動産の現況を確認して,条項に落とし込む土地の地目や地積,それに建物の利用状況等の表記が現況とそごがないか確認する。また,境界紛争や環境紛争(土壌汚染・アスベスト等)といった契約関係が必ずしもない(したがって書面がない)場合における紛争処理においては,尚更,実際の現場確認(実地調査)は重要な作業である。⑵ 公共性が強いこと 不動産は取引コスト削減の観点から,公示(登記)制度が用意されている。権利関係が公示されるという社会インフラの整備によって,国民は,多少のコストで不動産の権利調査を省略することができる。現況主義■■■■■ 地方税法及び固定資産評価基準(地方税法388条)は,一律大量処理の求められる固定資産税の賦課・徴収手続を円滑にするため,納税義務者である所有者の認定につき台帳課税主義(同法343条2項)を定め,また,一見して判別することができない地積については原則として登記簿主義(固定資産評価基準第1章第1節通則二)を採用するなどしている。もっとも,この前提として,市町村長に固定資産の状況につき,実地調査を義務付け(同法408条),地目や地積の認定については現況主義を採用している(固定資産評価基準第1章第1節,二1号)。このように台帳課税主義は,あくまで現況に基づいて確認された事項を前提に,租税徴収を行うものといえる。❖政府がこの社会インフラの整備に多大な投資をするのは,不動産が何よりも公益的な存在だからである。また,不動産は公共的な存在でもある。それゆえ,利用方法や処分方法などの面で,私人の財産権は公共の福祉のため一定の制約を受けることになる(文化財保護法〔昭和25年法律第214号〕,大深度地下の公共的使用に関する特別措置法〔平成12年法律第87号〕等参照)。
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