不証
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93 攻撃防御方法との関係示その他の法律行為がその文書によってされた場合の当該文書である。報告文書とは,処分証書以外の文書であり,作成者の認識などが記載された文書である。 文書は公文書(公正証書など)と私文書があり,この区別は成立の推定に当たり重要である。公文書は,公務員がその権限に基づいて職務上作成した文書であり,成立の真正について推定を受ける(民訴228条2項,5項)。他方,公文書以外の私文書は,このような推定を受けないが,「本人又はその代理人の署名又は押印」があるときは,当該文書は真正に成立したものと推定される(同条4項)。 ⒞ 文書の証拠力  文書の証拠力には,形式的証拠力と実質的証拠力がある。形式的証拠力とは,当該文書の作成者の意思に基づいて作成されているか(当該文書が真正に成立したか)という証拠としての前提である。実質的証拠力とは,当該文書の記載内容が要証事実の証明に役立つ程度であり,証拠価値あるいは証明力ということもある(加藤・技法71頁)。❖なお,処分証書と報告文書は同一の文書に混在していることも多くあり,例えば,抵当権設定契約書の中に貸金交付の事実が記載されていたとしても,この部分は報告文書にすぎず,有力な間接証拠ではあるものの,他の証拠いかんでは否認されることもある。❖そして,文書中の印影が本人又はその代理人の印章によったものであるときは,経験則上それは本人又は代理人の意思に基づいて押印されたものであるとの事実上の推定がされる結果,印章と同一の印影があれば,署名・押印の推定がされ,最終的に文書成立の推定がなされることになる。これを「二段の推定」と呼ぶ(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)。❖成立の真正性と内容の真実性は別の問題であり,文書が真正に成立したとしても,記載内容が真実であるとは限らず,慎重に吟味する必要がある。なお,書証の成立に関する自白は裁判所を拘束しない(最判昭和52年4月15日民集31巻3号371頁)から,当事者に争いのない書証の成立の真正が否定されることもある。他方,単に書証の成立の真正を否認するのみでは弁論の全趣旨として成立の真正が認められることがある。書証の否認には,①成立それ自体を否認するタイプ(形式的証拠力の問題)と,②文書の内容に関する(文書の記載内容のような法律効果を発生させる認識はなかったなどというもので,実務

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