第2節 不動産訴訟における資料の役割上「趣旨否認」ということもある。これは実質的証拠力の問題である)タイプがあり,争点整理のためにこの区別は重要である。10 ⒟ 処分証書について 処分証書は,文書の成立の真正が認められれば,特段の事情がない限り,作成者によって記載内容のとおりの法律行為がされたものと認められる(最判昭和32年10月31日民集11巻10号1779頁)。もっとも,特段の事情があれば,契約書が存在しても,間接事実から契約の成立が否定されることがある(東京地判平成2年11月14日判タ765号236頁)。⑵ 不動産訴訟特有の主張立証方法 不動産訴訟においても,訴訟手続における立証の方法は他の訴訟と基本的に同様である。もっとも,不動産訴訟の可視性からくる特有の立証方法もある。 ⒜ 書証・人証 不動産訴訟においても,書証や人証は基本的立証方法であり,重要である。 ⒝ 検証・鑑定 検証は,境界確定訴訟等において採用される手続である。また不動産訴訟で鑑定を実施することもある。❖実務上,処分証書の存在のいかんは勝敗を決するといってもよく,成立の真正が認められれば,書証の記載に反する認定は基本的には違法とされる(最判昭和42年12月21日集民89号457頁,最判平成14年6月13日判時1816号25頁等)。これは,①文書に記載されているものを特段の事情なく排斥してはいけないというルールと,②文書に記載されていないものを特段の事情なく認定してはいけないというルール(最判昭和47年3月2日集民105号225頁)を包含する。❖当然ながら書証の取得提出は,当事者が行うことである。当事者は法務局等を利用して取得した資料を証拠として書証の申出をすることになるが,弁護士会の照会手続を利用して資料を取得する場合もある。また行政文書の情報公開請求等を利用して,資料を取得することもできる。さらに,裁判手続上の調査嘱託,文書提出命令等の手続を利用することもある。❖例えば,建築訴訟は,調停や専門委員により専門的知見を獲得して紛争を解決するというプラクティスが一般的であるが,鑑定が実施されることも稀にある(東京地判平成31年3月29日判タ1477号211頁)。なお鑑定を実施する場合には,調停や専門委員の活用による場合に比べ,一般的に審理に時間を要
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