不証
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る(民法177条)。3)不動産物権変動は登記をして初めて第三者に対してその存在を主張(対抗)でき,ここに物権変動が完了(安定)する。ただし,これは実体を伴ったことを前提とするため,実体を伴わない無効な登記は対抗力を持たない(優先劣後を争う土俵に上がれない)ことはもとより,現況と登記上の建物が同一性を認識し得ない程度に異なっている場合は,当該登記に対抗力はない(最判昭和40年3月17日判時403号11頁)。 ⒞ 公信力  登記の有する効力は以上のものにとどまる。これを超えて,相手方が無権利者であるにもかかわらず権利者であるかのような外観を信頼して取引をした者に権利の取得を認める効力(公信力)は登記に付与されていない。そのため,登記を信頼して名義人からある不動産を購入しても,当該登記に実体がなければ,当該不動産の所有権を取得することができないのが原則である(民法94条2項の類推適用による保護は登記に公信力がないことを前提としている。最判平成18年2月23日民集60巻2号546頁参照)。4)第1節 所有権関係3) 民法177条の「登記」とは,権利に関する登記を意味するから,表示に関する登記には対抗力がない(鎌田=寺田105頁)。ただし,借地権を対抗する場合の建物の「登記」には,表示に関する登記も含まれる(最判昭和50年2月13日民集29巻2号83頁)。4) もっとも,登記が無効であっても,それが現在の権利関係に合致する限りあえてその抹消までする必要はなく,当該登記を有効なものとして扱える場合がある(東京地判平成5年3月25日判タ844号255頁)。50⑶ 登記事項の事実上の推定力 不動産登記に公信力がないため,登記をもって所有権を立証することはできない。もっとも,登記上「所有者」として記載されていることは,所有権の立証の上でも重要である。❖登記には,表題登記などの「表示に関する登記」(不動産登記法2条3号)の他に「権利に関する登記」(同法2条4号)がある。前者は,権利の登記の起点となる登記(物理情報)であり,表題部(表示に関する登記が記録される部分)の「所有者」は所有権の保存登記(権利部の甲区に初めてする登記)を単独で申請できる(同法74条1項1号)。後者は,所有権や抵当権などの保存・設定・移転・消滅等に関する登記(権利情報)である(同法3条各号)。権利部(権利に関する登記が記録される部分)のうち甲区には,所有権に関する事項が記載される。例えば,所有権移転などの物権変動が記載されるとと

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