不証
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512 登記事項証明書・農地台帳・林地台帳・森林簿5) 登記簿の記載に事実上の推定力が認められるのは,本登記の場合だけであり,仮登記の場合には,登記簿の記載に事実上の推定力も認められない(最判昭和49年2月7日民集28巻1号52頁。不動産につき贈与を原因とする所有権移転仮登記がなされているにとどまるときは,仮登記権利者が当該不動産の所有権を取得したことはもとより,当該不動産の贈与を受けた事実についても,仮登記の存在のみによってこれを推定することはできないとした)。 登記簿上の所有名義人の記載に,事実上の推定力が認められ,登記簿上の所有名義人は,反証のない限り,当該不動産の所有権を有するものと推定される(これを事実上の権利推定5)という。最判昭和34年1月8日民集13巻1号1頁,最判昭和46年6月29日判時635号110頁,最判昭和50年7月10日金法765号37頁等)。なお,登記簿に記載された登記原因の事実についても推定されるかどうかが問題となるが,上記最判昭和46年6月29日は「登記はその記載事項につき事実上の推定力を有する」と判示している。ところで,土地の表題登記のうち実務上重要な事項は,「地積」(不動産登記法34条1項4号)である。「地積」とは,一筆の土地の面積であり(同法2条19号),水平投影面積により求める(不動産登記規則100条)。土地の表示に関する登記の申請情報の内容の地積と登記官の実地調査の結果による地積に差が生じることがあるが,これが誤差の範囲内であるときは,登記官は裁量により前者を相当として登記することが許されている(不登準則70条)から,登記上の「地積」と実測による地積が異なっている可能性がある。また,建物の表示に関する登記のうち「建物の床面積」(不動産登記法44条1項3号)は,2つの計算方法があるため,対象建物の床面積がいずれであるかを確認する必要がある。1つは壁心計算であり,もう1つは内測計算である。前者が原則であるが,区分建物に限っては後者による(不動産登記規則115条)。ちなみに,建築確認においては、壁心計算である(建築基準法施行令2条1項3号)ので留意する。もに,「所有者」も記載される。よって,登記上「所有者」という記載は,表題部と権利部にそれぞれに存在する。❖訴訟の場面でいうと,原告が所有権を主張して不動産の明渡しを請求する場合,原告は自身が所有名義人として記載されている登記事項証明書を書証として提出すれば,原告に当該不動産の所有権があることが事実上推定され,当該不動産の所有権取得原因となる具体的事実を主張立証する必要もない。被告としては,権利自白をしない場合には,原告への登記が登記義務者の意

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