不証
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552 登記事項証明書・農地台帳・林地台帳・森林簿資の出捐や使用収益の状況,登記名義人と取得原資出捐者や使用収益者との関係等を総合考慮して,登記名義人以外の者に所有権が帰属するというべき特段の事情があると認められる場合には,その者を当該不動産の所有者と認定するのが相当である場合がある(大阪高判平成27年11月27日税資265号12762順号,高知地判平成8年10月23日判時1624号126頁,東京高判昭和54年5月28日判タ389号90頁参照)。❖登記原因の売買の買主が異なっていた場合などで登記が実体と異なれば,真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることになる。なお,建築資金について金融機関から融資を受けるために,あえて実際とは異なる買受人名義(形式的名義人)とすることがある(東京高判平成4年3月25日判タ805号203頁)。また,株式会社の代表取締役が個人名義で不動産を買い受けた場合に,その売買契約の効力が当該代表取締役個人に及ぶとは限らず,会社に及ぶこともある(最判昭和44年9月11日集民96号497頁)。■■■■■ 仮差押えの対象不動産の帰属についての立証の程度は,疎明ではなく証明であるとするのが裁判実務であるところ(東京高決平成3年11月18日判時1443号63頁),この場面でも登記事項証明書は強力な証明手段となる。不動産の仮差押命令の申立てをするには,当該不動産が債務者に帰属することを証明する必要があり,登記がされた不動産については登記事項証明書を添付することによってこれを証明しなければならない(民事保全規則20条1号イ)。なお,この場合,登記事項証明書の所有名義は債務者となっている必要があり,そうでない場合は,登記事項証明書に代えて別の文書で当該不動産が債務者の所有であることを証明することはできず,仮差押命令の申立ては不適法として却下を免れない。これは不動産の所有者の認定については,登記名義によって一律に判断するのが手続の安定にかなうからである。よって,他人名義の不動産については,債権者は,まず,債権者代位権に基づいて登記名義を債務者に変更した上で(民法423条,不動産登記法59条7号),変更後の登記事項証明書を添付しなければならない。仮差押えと登記事項証明書

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