不証
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3 固定資産課税台帳〈資料6〉・名寄帳〈資料7〉第1節 所有権関係12) 例外として,職権主義が採用されているのは,私権の保護を直接の目的とせず,登記官の職権による現況調査を通じて登記の申請を確保することが望まれる表示に関する登記である(不動産登記法28条)。もっともこの場合でも,当事者の申請を原則とし,職56⑸ 登記名義のその余の効果 実体と登記にそごがある場合,原則として,実体に則して事件は処理される。もっとも,一定の場合に,登記に則して処理することが妥当な場合もある。このことを未登記建物の場合で考えてみたい。まず前提として,土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とする必要がある。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,当該譲渡人は,土地所有者による建物収去土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができる(最判昭和35年6月17日民集14巻8号1396頁)。また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物収去土地明渡しの義務を負わない(最判昭和47年12月7日民集26巻10号1829頁)。もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとえ建物を他に譲渡したとしても,引き続き登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れることはできない(最判平成6年2月8日民集48巻2号373頁)。⑴ 意 義 登記事項証明書は,登記官が認証する公的文書でありながらも,登記官が職権で登記事項を認定するものではなく,あくまで当事者の共同申請に基づいて権利変動を公示するものである(不動産登記法16条1項)。12)

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