4則がより強く意識される文脈でジェンダー平等を様々な領域で実現する作業が進行している。 本章では、「ジェンダー平等とシティズンシップ」の問題について展開された判例を取り上げる。以下、各判例について各執筆者の解説をもとにその意義を述べる。1 国籍取得におけるジェンダー・バイアス 【1】判決は、シティズンシップ概念の中核ともいうべき「国籍」の取得について、出生後父から認知された子は準正により嫡出子の身分を取得しない限り国籍取得を認めない=「日本国民の資格」を与えないという旧国籍法の規定を違憲・無効とした画期的判決である。 出生後に父から認知された子については、父母が婚姻しない限り国籍を取得することができないという規定は、「生活様式/生き方」としてのジェンダーにかかわるものである。 「生活様式/生き方」としてのジェンダーは、われわれの性に関する一般的な言説や社会通念、慣習、人々の生き方などの社会生活全般の性規範・社会観に関するものであり、性差・性別観(「身体」としての性、「アイデンティティ」としての性)にもとづいて形成される性規範・社会観を意味している。 「生活様式/生き方」としてのジェンダーのカテゴリーにおいては、人の生活様式や生き方は、男性優位・男性中心的な性規範・社会観にもとづいたものとして歴史的に形成されてきており、今日社会一般に広範囲に存在するジェンダー・バイアスを含んだ規範が形成されている。 旧国籍法の規定が、婚外子について、出生後に認知された子について、父母が法律上の婚姻をしたことをもって、わが国との「密接な結びつき」の存在を認め、この要件を満たさない限り、子に国籍取得を認めないとすることは、法律婚・嫡出子を典型家族とし、非婚・非嫡出子を非典型家族とする性規範・社会観としてのジェンダーにかかわるものであり、ジェンダー・バイアスを含む規範であり、不合理な差別を導くものといえよう。第1章 性差別と人権
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