⑴ 本件は、法律上の婚姻関係にない日本国籍を有する父と、フィリピン共和国籍を有する母との間に日本で出生したXが、出生後父から認知されたことを理由に2003(平成15年)に法務大臣あてに国籍取得届を提出したところ、国籍取得の条件を備えていないとされたことから、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子であることを国籍取得の要件と定める国籍法3条1項(当時)の規定が憲法14条1項に違反すること等を主張して、国に対し、日本国籍を有することの確認を求めた事案である。最高裁大法廷は、国籍法3条1項(当時)の規定が日本国籍の取得につき憲法14条1項に違反する差別を生じさせていることを違憲とした上で、Xの請求を認容すべきとしたものである1)(民集62巻6号1367頁以下)。 なお、最高裁大法廷は、本件と同様に、日本国籍を有する父と、フィリピン共和国籍を有する母との間に日本で出生した子9名が日本国籍を有することの確認を求めた事件(平成19年(行ツ)第164号事件)についても、本判決と同日に、請求を認容すべきものとする判決を言い渡している(国籍確認請求事件=最大判平成20年6月4日)。81 事実関係の概要№№11⑵ 関係法令の定め 憲法10条は「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」とし、国籍法1条は「日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる」としている。そして、同法2条1号は「出生の時に父又は母が日本国民であると国籍取得におけるジェンダーバイアス(最大判2008(平成20)年6月4日民集62巻6号1367頁)
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