マン民
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第2章 既存制度によるマンション管理の対応とその留意点25第1 総 会限を授与することはできない。1)イ 関連裁判例ア 東京地判平24・12・27判タ1394号340頁 裁判例としては,まず,従前から代理者選任届を提出させていたが代理権授与に変更があった場合に改めて変更の届出をさせることになっており,総会のたびに提出させてはいなかったマンション管理組合において,代理権は特定の総会の特定の議案ごとに授与される必要がある等と主張され,建替え決議の有効性が争われた事案がある(東京地判平24・12・27判タ1394号 同判決は,建替え決議が行われた同じ年の約8か月前に,代理人になる者が区分所有者に対し建替え問題を含め区分所有者としての権限について自分が代理人になる旨の説明を行い,区分所有者が建替え問題を含めその代理権を与えた事実を認定した上で,「財産権に関する事項の委任として,上記のような代理権の授与は,許されるし,区分所有法上又は本件管理組合規約上も,代理権の授与が特定の総会の特定の議案ごとにされなければならないとの定めもないから,A(編注:区分所有者)による上記の代理権の授与は有効である。」としている。 当該判断は,あくまで当該事実認定(建替えという個別問題についての授権決議の重大性にも鑑みれば,広く一般的に,1回の代理権の授与で将来的包括的に全ての総会の代理権が委任され,特定の総会の特定の議案ごとにされる必要はないとするものではないと考えられる。イ 東京地判平23・7・6ウエストロー(事件番号:平22ワ21641号) 次に,区分所有建物が数人の共有に属する場合に関する裁判例ではあるが,この場合であっても,「全共有者から委任を受けた者が議決権を代理行使することは許されると解するのが相当である。」とした上で,「この委任は,総会が招集されるごとに行う必要はなく,事前に包括的に行うこと1) 渡辺晋=久保田理広『マンション標準管理規約の解説〔4訂版〕』208頁(住宅新報出版,2022)340頁)。が明示的になされていたこと)を前提とした事例判断である。よって,建替え

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