マン民
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第3節 信託登記の申請り消滅する旨の規定がある。 登録免許税法7条2項が単純に当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人であることを求めている点を考慮すると,本書事例の場合,「委託者の地位は受益者に承継されるとする」旨の定めで登録免許税法7条2項にいう相続人と考えるのは消極的に捉えられる余地もある。その場合,登録免許税は,相続税率である1000分の4ではなく,1000分の20になる。 このように登録免許税法7条2項適用の有無で,登録免許税の額が大きく異なることになる点は注意を要する。結局は,この点でもその都度事前に管轄の法務局との打合せが必要となろう。 実務では,信託を設定する家族間の事情から,様々な工夫をこらした信託契約条項が作成されることがしばしばである。本書契約での相続に関して委託者の地位及び権能と地位に基づく権利を分けた工夫も,受益権は相続発生により消滅する旨の条項も相続発生時の諸事情を考慮しての条項と推察できるが,登録免許税法7条2項の規定はこのような細かい規定がある事案を想定してはいないであろう。 このように,信託設定時の諸事情に配慮し,信託終了時の処理を考えると,信託契約書作成においては,相続発生時の状況や残余財産受益者との関係を考慮しなくてはならず,契約条項が複雑になりがちであり,それをどのように分かりやすい条項にするかは工夫を要するところである。 その上,登録免許税率にも配慮しなくてはならず,かなり広い法律的な視野と細かい配慮が要求される。このような点も民事信託に関する信託契約に関わる専門職としては十分注意をして執務をする必要がある。166

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