第2節 区分所有者の高齢化に伴う問題・課題(=管理組合員の若返り)を促進することができれば,外部専門家の活用など⑵ 管理組合にとっての課題 区分所有者の高齢化等に伴う管理組合の厳しい運営事情に鑑みて,国土交通省は「マンション標準管理規約及び同コメント」を平成23年に改正し,管理組合が自主的に対応する際の参考指針として,管理組合の自立支援の必要度に応じ,外部専門家を有効に活用する方法を3つの類型で示している。この外部専門家の活用の指針が示すように,管理組合の事務の執行機能を確保するため,外部専門家を理事や理事長(管理者),監事等に就任できるようにすることは,役員のなり手が少ない管理組合にとって有効な方策と考えられる。しかしながら,高齢者が多い高経年マンションでは,区分所有者の合意形成や総会決議の困難化,各種のトラブルや突発的な事故への対応など様々な問題が想定される。このため,実際には管理組合と外部専門家の双方の事情により,外部専門家の活用が円滑に進まないことも考えられる。また,外部専門家を理事等に活用する場合には,同時に監視・監督の体制を十分確保する必要があるが,区分所有者の高齢化の進行に伴って,監視・監督の機能が円滑に働かなくなることも考え得る。 このような問題点を踏まえると,高経年マンションの管理組合の運営の安定性を回復し,健全な管理を持続する上で共通する基本的な課題として,区分所有者の世代交代をどのように促進するかという点が挙げられる。すなわち,高齢者のマンション居住の安定とマンションの適正な管理を確保することを目的とし,高齢者から次の世代への区分所有者の地位の移転の取組みが円滑化し,弱体化した管理組合の再生・活性化が進み,次世代に承継される社会的資産であるマンションを最適にマネジメントしていくことが期待できると言えよう。316
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