財清
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3不在者財産管理人選任の要件3 不在者財産管理人が選任されるためには、不在者自らが管理人を置いていないことのほか、次の3つの要件が必要である。⑴ 不在者自身において財産を管理することができないこと 財産を管理することができないとは、財産管理に必要な通信・交通が困難な場合も含まれる(『財産管理・諸問題』118頁参照)。典型例としての行方不明者のほか、不在者が国交未回復の外国に居住している、諸外国を短期間のうちに転々としているなどが考えられる。 3 不在者財産管理人選任の要件 7【不在者の財産のうち特定の不動産のみ管理する必要がある場合の対応】 不在者財産管理は、管理人が不在者の帰来時等までの間につき、不在者の財産全般の管理を継続するものであるから、原則として、個別の財産ごとに複数の管理人を選任したり、個別の財産の状況だけで財産管理手続の全体の管理を終了することは制度的に予定されていないと解される(『財産管理・諸問題』117頁)。そのため、不在者の特定の財産についてのみ管理・処分が必要な事案でも不在者の全財産を管理する不在者財産管理人を選任しなければならず、多額の費用等を負担し、管理・処分を終えるまで時間を要するという課題が指摘されていた。 こうした課題等を踏まえて令和3年法改正により、所有者の所在が不明であったり、所有者の相続人が不分明であった場合において、特定の不動産のみの管理が必要な場合には、所有者不明土地管理命令(民264条の2)又は所有者不明建物管理命令(民264条の8)を発令し、当該管理人の権限を不動産の管理に特化させ、当該不動産の管理処分権は管理人に専属するものとなった。そのため、当該不動産の所有者につき、不在者財産管理人が選任されても同管理人はその不動産について管理処分権を有しない(荒井『令和3年民法改正』128頁、『財産管理・研究』45頁参照)。

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