財清
32/58

10 第 1 章 不在者財産管理人【移送をめぐる実務の運用】 家事事件手続法は、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所を管轄裁判所と定めていることから、複数の管轄が想定されており、その後の管理も念頭に置いた上で裁判所を選択することが可能である。 もっとも、認められる複数の管轄であっても不都合であると考える場合(例えば、遺産分割や共有物分割目的による不在者財産管理人の選任申立てにおいて、不在者の従来の住所地又は居所地が、申立人や利害関係人の住所地、相続財産や共有財産の所在地から離れており、遠隔地の家庭裁判所を管轄裁判所としなければならないのでは不都合である場合など)には、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てるとともに移送の上申書を提出する、あるいは、希望する法定の管轄がない家庭裁判所に申し立てるとともに自庁処理の上申書を提出することが考えられる。③ 移送の裁判ア 管轄違いを理由とする移送(家事法9条1項本文) 申立人が、全く管轄のない家庭裁判所(従来の住所地又は居所地を管轄しない家庭裁判所)に申立てをした場合は、職権又は申立人若しくは利害関係参加人からの申立てにより、管轄のある裁判所に移送することになる(家事法9条1項)。この場合も複数の家庭裁判所への移送が可能になるため、その後の監督手続や裁判手続を考慮した上で管轄裁判所を選択する必要がある。イ 管轄権を有する裁判所による移送(家事法9条2項) 家庭裁判所は、管轄権を有する裁判所以外(家事法5条により管轄権を有しないとされた家庭裁判所を含む。)へ移送をする場合は、家事法9条2項1号又は2号に基づく移送を行うことになる。なお、同法9条2項による移送は職権で行うことになるため、移送を希望する場合は、当該家庭裁判所に職権発動を促すための上申書を提出することになる(参考1)。

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る