財清
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4 相続財産清算人選任の要件 143③ 積極財産が僅少な場合※ 官報公告費用だけで5万円程度かかるので、相続財産のほとんどが、官報公告費用として使用されてしまうことになる。相続財産清算人の報酬まで考慮すると、10万円前後でも、相続財産清算人を選任する実益があるのか、疑問の余地がある。2 「借家内部に残置された食器類や古い衣服などのみしか相続財産がない場合」(『財産管理・諸問題』30頁)。④ 消極財産しかない場合【具体例】1 現金、預貯金の合計が5万円程度しかない場合財産とは、相続人が存在していれば承継されるべき「被相続人の財産に属した一切の権利義務」をいう(民896条本文)。 ただし、被相続人の一身に専属したものは除かれる(民896条ただし書)。また、祭祀財産も相続財産とはならない(民897条1項)。 相続財産が極めて僅少な価値しかない場合でも、法的には相続財産法人が成立しているといわざるを得ない。 しかし、相続財産清算人を選任して、その後の手続を行うためには、官報公告費用や相続財産の調査に要する費用、相続財産清算人の報酬、その他相続財産の清算に要する費用がかかることになり、これらの費用を支弁するに足りるだけの相続財産がなければ、相続財産清算人を選任する実益がないというべきである。 相続財産に消極財産しかない場合にも、法的には相続財産法人が成立しているといわざるを得ない。 もっとも、消極財産しかない場合には、通常は清算すべき財産が存在せず、相続財産清算人を選任する実益がないと考えられる。 相続財産法人に登記義務があると考えられる場合には、相続財産清算人を選任する実益があるといえるが、特別代理人の選任により対処できる場合もあるだろう。

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