第Ⅱ部完全オンライン申請の準備◦商業登記電子証明書とは①商業登記電子証明書の概要と用途商業登記電子証明書とは,商業登記に基づく電子認証制度のもと,登記所(発行請求先は管轄法務局・発行元は電子認証登記所(東京法務局))が発行する,会社・法人等の代表者等に関する電子証明書(商登規33条の8第2項)を指します。電子認証登記所電子証明書とも呼ばれます。その特徴として,①法人の代表者を証明していること,②商業登記の情報に基づく内容であること,③政府機関が発行していることが挙げられます。◦行政手続等での利用商業登記電子証明書を用いて,商業登記のオンライン申請に際し,会社・法人の代表者は,申請情報・代表者作成の添付情報・登記委任状について電子署名を行うことが可能です(前頁上表)。それだけでなく,登記申請で提出を要しない取締役会議事録等,会社法上の押印義務のある電子文書にも,代表者の署名又は記名押印に代わる措置として利用することも可能です(会施規225条1項・2項)。また,商業登記だけでなく,不動産登記,動産・債権譲渡登記,成年後見登記,供託,電子公証のオンライン申請,印鑑証明書のオンライン請求等の各種手続にも利用できます。さらに,法務省管轄以外にも,e-Tax(国税電子申告・納税システム),eLTAX(地方税電子申告),社会保険・雇用保険・労働保険関係手続(e-Gov電子申請),特許のインターネット出願,電子入札・電子調達や裁判所への支払督促のオンライン手続等において利用が可能です。そのため,一定規模以上の企業が,商業登記電子証明書の取得を検討する際には,別部署で既に取得・利用がなされていないかを確認するとよいでしょう。例えば,法務部の登記申請では利用がなくとも,総務部や経理部の社会保険や税務手続で利用していたケースが見受けられます。ちなみに,電子契約や行政手続で商業登記電子証明書を利用したことのある企業の比率は,上場企業が多い母集団(経営法友会会員企業)への調査だと,34.7%という結果が出ています(船津浩司「『商業登記と企業の契約締結実務に関する質問票調査』の結果の分析(下)」旬刊商事法務2323号参照)。45
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