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14第1編 ストーリー編断能力の低下前で自立して生活しているとしても、急な病気で自宅で倒れたときや、救急車で病院に運ばれたときに、誰に頼ったらいいのかという不安を抱えている。また、任意後見受任者が感知できないうちに、高齢者が認知症を発症し、症状が進んでしまうこともあり得る。そこで、任意後見契約を締結するときに、「見守り契約」や「緊急時対応契約」等の委任契約を締結し、万が一の時の緊急連絡先を受任者に引き受けてもらうことが有用である。そして、緊急時には受任者である弁護士が、異変に気がつける立場の者(友人、隣人等)からの緊急連絡を受けられるようにし、あらかじめ預かっていた鍵を使って室内に入ったり、救急搬送されたときに病院の入院の手続を代行したり、預り金から入院代を支払うなどのサービスを提供することが考えられる。●医療に関する希望書 医療の世界でも、あらかじめ患者が元気なうちに自分の受けたい医療や受けたくない医療について、家族等と話し合い、記録に残しておくべき(アドバンス・ケア・プランニング)という考え方が主流になっている。任意後見においても、医療同意の代理権は認められていないが、アドバンス・ケア・プランニングの一環として、任意後見契約の締結の時に、委任者の終末期医療についての考え方を「医療に関する希望書」という形で記録化しておくことは有益である。そうすることで委任者が自分の意思を語れなくなったときに、任意後見人として、本人の望む医療は何かを示し、医療・ケアチームと、何が委任者にとって最善の治療かを一緒に協議することができる。また、任意後見契約書の付言事項として、医療に関する希望を書いておくことは、現在の公証実務上も認められている。●公正証書遺言・死後事務委任契約 公正証書遺言や死後事務委任契約は、任意後見契約とセットで頼まれやすい制度である。生前に頼りにできる親族がいない場合は、本人の死後も、遺体の引き取り、葬儀、火葬、埋葬、供養、部屋の片付け、残債務の支払などの死後事務について、動いてくれる親族がなかなかいない。そこで、本人の終活の一環として、任意後見契約を締結するのと同じ機会に、公正証書遺言または死後事務委任契約書を作成することが考えられる。こうすることで、本人の死後は、その意思に従った死後事務を行い、残った遺産については、遺言執行者として本人の生前の意思どおりに相続や遺贈をしていくことができる。一人の弁護士に生前と死後の連続した支援を依頼しておくことは、本人にとって最後まで安心できる暮らしにつながるものである。

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