共有
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i推薦のことば 述べるまでもなく共有不動産関係の訴訟は,所有者不明土地問題が関わる事案のみではありません。けれども,とりわけ近時の社会経済情勢にあって,なにがしかの関わりをもって所有者不明土地問題が絡む共有不動産訴訟が少なくないことも,たしかでしょう。 と,述べる際,実務に携わっている方々であれば容易に諒解可能なことであるとしても,国民一般において,所有者不明土地問題と共有とを並べてピンとこない向きがあるかもしれません。それも無理がないことです。所有者不明土地というと,一筆の土地があって,その一人の所有者が誰であるかがわからない,あるいはその所在がわからない,と素朴に理解されやすいものです。じつは所有者が一人であるということ自体,本当にそうであるか,調べてみて初めてわかります。そうではなく数人の所有者がある,つまり共有であることは珍しくありません。数代の相続があって権利関係の探索,確認が途上でされなくなると,たやすく共有者不明に至ります。共有者の全部がわからず,あるいは所在がわからない,という事案よりも,一部が判明しているが他の一部は連絡がつかない,という局面は,じつに多く経験します。 このたび,日本加除出版株式会社から上梓された本書,すなわち,田村洋三=山田知司編『実務 共有不動産関係訴訟─共有不動産に係る民事訴訟実務マニュアル─』は,こうした局面の克服も手助けしてくれる本です。本書は,平成28年に同社より刊行された『実務 相続関係訴訟─遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル─』に続く訴訟実務マニュアルの第2弾であり,多くの読者から,共有不動産が関係する訴訟を扱うものの要望があることに応えて刊行されました。 民事訴訟において,不動産に関する共有不動産関係の問題は,所有者不明土地でない場面であっても,実務家が日頃担当する訴訟事件の一つです。共有不動産関係の訴訟事件は,多様な訴訟形態をとり,それぞれに実務的な問題点があるにもかかわらず,訴訟実務に焦点を置く実務書推薦のことば

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