ii推薦のことばがこれまであまりありませんでした。 そのような中で本書は,いわゆる共有不動産関係訴訟を担当する弁護士や裁判官など実務家が切望する実務解説をかたちにしたものと評して過言ではありません。訴状や準備書面を作成する際,あるいは訴訟の方針を立てる際,訴訟物,要件事実,さらに訴訟法上の問題点など,実務上生起する多くの問題点に加えて理論の解説をし,もちろん関係する裁判例なども多く紹介し,また記載例を示しています。実務家の要望に応えた共有不動産関係訴訟全般の,その書名のとおり訴訟実務マニュアルであり,共有不動産に関係する実務家等の指針となるにちがいありません。 本書においては,第1章として共有不動産とその関係の訴訟についての総括的な解説をし,第2章以下で訴訟類型ごとに,実務的な解説がされています。所有者不明土地問題に関連する事項としては,第1章において,共有不動産の法律関係を概説したのち,令和5年4月より施行された令和3年の民法等の改正のうち共有に係る部分について解説がされています。この民法改正においては,所有者不明土地の発生の予防と,既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化を図るため,多岐にわたる見直しがされました。 監修・編著者である田村洋三弁護士と山田知司公証人,また,著者の浅香紀久雄弁護士,金子順一弁護士,齊木敏文公証人,阿部正幸公証人,山本剛史弁護士は,それぞれ裁判官の任にあった時に共有不動産関係の訴訟を担当なさり,理論と実務の双方について豊富な経験と高い識見を持った方々であり,このことが本書に高い水準と説得力を与えています。 共有不動産に関する紛争を取り扱う際,問題解決の良いガイドになるであろう本書が,広く多くの実務家諸氏に読まれることを望みます。 2024年6月早稲田大学大学院法務研究科教授 山野目 章 夫
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