12第1章 共有不動産の法律関係と共有不動産関係訴訟2019年))。ア 相続に関する権利承継における対抗要件主義の採用 相続による権利の承継は,遺産分割によるか否かにかかわらず(すなわち,遺言等による場合を含め),法定相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えないと第三者に対抗できないものとされた(民899条の2)。 平成30年の改正前においては,特定財産承継遺言や相続分の指定がされた場合などを含めて,相続による権利承継は対抗要件不要と解されていたが,相続債権者や被相続人の債務者等に不測の損害を与えるおそれがあるとされていたことから,対抗要件主義が採用されたものである。イ 遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ 遺留分権利者(及びその承継人)は,受遺者(及び特定財産承継遺言による承継人,相続分の指定を受けた相続人)又は受贈者に対して,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができることとされた(民1046条1項)。 平成30年の改正前においては,遺留分減殺請求に物権的効果があるものとされており,減殺請求権の行使により対象財産が(準)共有状態となり,複雑な権利関係が生じたり,その解消等をめぐってさらなる紛争が生じるなどしたことがあったことから,現物返還原則主義を改め,金銭債権化されたものである。ウ 改正法の原則的施行日及び経過措置 平成30年改正民法は,一部を除き,上記ア・イを含めて,令和元年(2019年)7月1日から施行されているが,改正民法施行日前に開始した相続に関しては,原則として改正前の法律が適用されるとしている(旧法主義,改正法附則2条)。しかし,これには少なくない例外が経過措置として定められているが,共有不動産に関する上記ア・イについては旧法主義の原則どおりとされている。
元のページ ../index.html#46