69第1 共有関係確認請求訴訟 最二小判昭和46年6月18日民集25巻4号550頁は,「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条にいう『第三者』に該当するから,右譲渡につき登記が存しないときには,譲受人は,右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない。」とし,さらに「共有物分割の訴は,共有者間の権利関係をその全員について画一的に創設する訴であるから,持分譲渡があっても,これをもつて他の共有者に対抗できないときには,共有者全員に対する関係において,右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割をなすべきものである」とした。事案は,兄弟姉妹4名の共有に属する不動産について,相続,持分の譲渡があったが,持分の譲渡の一部に対応する持分移転登記がなかったものである。 民法177条の第三者は,当該物権の得喪を相争う関係にあるものでなくても,物権変動の当事者及びその承継人以外の者であって当該物権変動に利害関係を有する者はこれに該当すると解されており,共有物分割における他の共有者は,他の共有者が誰であるか,また,その持分割合がどれほどかに利害関係があるというべきであるので,上記の結論は是認できる。なお,民法899条の2は,相続による権利の承継については,法定相続分を超える部分について,登記その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないと定めているが,ここでいう第三者は,共同相続人以外の者をいう。相続による権利の承継について,共同相続人は,被相続人の承継人であるから,相続という物権変動の当事者の承継人に該当するからである。 確認訴訟は,既判力の及ぶ範囲が訴訟当事者に限定され,他人の権利の確定は原則としてできないことに照らせば,元来,相対的に確定するものであるが,共有物においては,共有者の関係で共有持分の有無及びその割合が全員について合一に確定しなければ,共有物の管理や分割の諸手続で不都合が生ずる。そのため,全員に既判力を生じさせるための手続が必要であり,それが共有持分の割合を含む共有関係の確認であり,その手続は,固有必要的共同訴訟であり,かつ,権利関係の確定に不動産登記といった対抗要件を基準とせざるを得ないというべきである。
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