共有
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70第2章 共有不動産に係る確認請求訴訟,共有物分割請求訴訟等⑺ 遺産確認請求訴訟との関係 相続開始後の遺産共有も民法上の共有であると解されているから(最三小判昭和30年5月31日民集9巻6号793頁),遺産共有に関する確認訴訟においては通常の共有も遺産共有も同じ規律に従うということは間違いがない。 しかし,遺産共有の解消方法は遺産分割であり共有物分割の訴えではできないとされている(最二小判昭和50年11月7日民集29巻10号1525頁)ことからの特殊性がある。すなわち,遺産共有にあっては,遺産確認請求訴訟が認知されている。最一小判昭和61年3月13日民集40巻2号389頁は,「遺産確認の訴えは,右のような共有持分の割合は問題にせず,端的に,当該財産が現に被相続人の遺産に属すること,換言すれば,当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであって,その原告勝訴の確定判決は,当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもつて確定し,したがつて,これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず,もつて,原告の前記意思によりかなった紛争の解決を図ることができるところであるから,かかる訴えは適法というべきである。」とした。「遺産分割前の共有関係にあること」が確認の対象であり,この点について既判力が生ずる。 遺産共有は,基本的に遺産分割により早期に共有状態を解消することを予定しており,遺産共有の状態が長期間続くことを予定していない。しかし,親族間における権利関係であるため,実体的権利関係と不動産登記等の所有名義の乖離があったり,権利移転等に証拠書類の作成が励行されないことから,遺産に属するかどうか(被相続人が死亡時に所有していたかどうか)が争われることは多いので,遺産確認請求訴訟はよく使われる。そして,遺産共有における共有割合については,基本的に共同相続人の身分関係によって確定するのであり,指定相続分(民902条)がある場合でも遺言が存在し,法定相続分を超える指定相続分の取得についても,共同相続人間では対抗要件(不動産登記)を要しない。そして,争いがあるのであれば,身分関係や遺言の効力については,別の人事訴

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