2 請求(訴訟物)と請求の趣旨⑴ 訴訟物 訴訟物は,対象不動産が共有者らの共有状態にあることである。また,各共有者の共有持分の割合を確定する必要があれば,その点も対象とする。必要がなければ,判断を求めなくてもよい。内部関係では,持分割合を問題にすることが多く,対外的に確認を求める場合には,各共有者の持分を問題にする必要は少ないと思われる。例えば,不動産の賃借権の共有者が賃貸人を相手に賃借権の確認を求める場合に共有者の持分割合を問題にする必要があることは少ないと思われる。 ちなみに,共有持分権の確認請求においても,通常は持分割合を問題とすることになると思われるが,不要な場合もある。隣地所有者を相手方として,共有土地の所有権(持分権)の範囲の確認を求める場合には,71第1 共有関係確認請求訴訟訟や遺言の効力の確認訴訟によって解決するのが通常である。共有者の範囲や共有持分(指定相続分など)を訴訟物とする共有関係確認請求訴訟も可能であるが,人事訴訟に対世効があること(人訴24条1項)等を考慮すると,共有関係確認訴訟の利用を選択する場合は少ないと思われる。 遺産確認請求訴訟は,共同相続人の間において特定の財産が被相続人の遺産に属するか否かを既判力によって確定するものであるから,共同相続人でない者を相手として遺産であることの確認を求める訴えをすることはできない(東京高判平成4年12月10日東高民時報43巻1〜12号77頁)。したがって,第三者が遺産に属する財産の帰属を争っている場合は,共有関係の確認請求あるいは共有持分権の確認請求で行うことになる。共有関係の確認請求では,共同相続人の共有であることが確認の対象であり,遺産に属するかどうかの点は確認の対象ではない。逆に,相続人において,争っている相手方が対象不動産の所有権を有しないこと等の消極的確認を求めることで目的を達する場合もあるかもしれない。確認訴訟だけで用が足りない場合には,物の引渡し,登記請求を併せて行う必要がある。
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