74第2章 共有不動産に係る確認請求訴訟,共有物分割請求訴訟等 ア 先代乙(被相続人)の所有であったことに争いが予想されなければ,①②の主張は省いて,「本件不動産は元先代乙の所有であった。」としてよい。先代の所有自体が争われた場合には,先代の所有権取得原因事実の主張が必要であり,甲の元所有に争いがなければ,①②の主張をすれば足りる。 イ ③④は共有状態にあることを示す事実である。共有持分の割合の確認を求めない前提で記載しているので,法定相続分を裏付ける事実の記載はしていない。先代との身分関係を記載した方が事件のイメージをつかみやすいことはあるが,要件事実として不可欠ではない。 ウ ⑤は確認の利益に関する事実である。 エ 遺産共有の場合,遺産性を争う者が共同相続人以外のときは遺産確認請求訴訟によることができないので,共有関係確認請求訴訟を用いることになる。 オ 相続人の一部が訴え提起に同調しない場合,その者を被告として訴えを提起する方法があるが,問題があることは既述のとおりである。共有関係確認請求訴訟ではなく,共有持分権確認請求訴訟で代替することも考えられるが,既判力の内容に差があることに注意が必要である。イ 通常共有の場合─対第三者─共同購入【記載例5】① 別紙物件目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)は,元甲の所有であった。② 原告らは,令和○年○月○日,甲との間で本件不動産につき,代金を○○万円と定めて売買契約を締結した。③ 被告は,本件不動産が自己の所有に属すると主張し,原告らの共有であることを争っている。④ よって,原告らは,原告ら及び被告の間において,本件不動産が原告らの共有に属することの確認を求める。
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