⑵ 争点ごとに考えられる証拠83ア 共有の発生原因が相続である場合イ 法律行為の成立に関する事実ウ 法律行為の瑕疵に関する事実第1 共有関係確認請求訴訟 相続による登記が未了の場合が多いので,先代の登記名義の登記事項証明書,相続開始の事実の証明のための除籍謄本,相続人の証明のための被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等,相続人全員の戸籍謄本が基本書証として必要とされる。必要的共同訴訟について弁論主義の適用がないから,当事者全員に争いがない事実についても,裁判所は弁論の全趣旨と証拠により事実認定をすることになるし,自白が裁判所を拘束することはない。 前主又は原告らの所有権(共有持分権)の取得の原因となる法律行為(請求原因として),前主又は原告らの所有権(共有持分権)の喪失の原因となる法律行為(抗弁として)については,一般に書面による法律行為であればその契約証書が基本書証であり,書面によらない場合は,明示の契約なのか黙示の契約なのかのメリハリをつけて,間接事実について必要な証拠を整理する必要がある。供述証拠によらざるを得ない部分があるとしても,紛争後作成したもの(いわゆる陳述書)だけでなく,過去の供述の痕跡(メール,チャット等)を集めて分析する必要がある。協議があったことは認めるが,合意に至っていないという争いが多いので,その決め手になる事実と証拠を吟味する必要がある。 記載例のところでは,虚偽表示,錯誤,詐欺,強迫などの意思表示の瑕疵を掲げたが,その他にも,意思能力の欠缺,要式行為(例えば遺言)の形式的要件の不備など千差万別であり,証拠関係も多彩であり,個別の記載は省略する。
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