マン相
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裁判例においても、会社事務(注31)所や士業事務(注32)所としての利用については、その具体的な利用状況を問うことなく住居専用規定に違反するものと判断しています。他方、住宅としての利用とともに営業行為が行われている場合には、具体的な利用方法にも着目して住宅としての利用の範疇かを判断する傾向にありま(注33)す。3 住居専用規定違反と共同利益背反行為との関係なお、住居専用規定違反の是正を求めるに当たっては、通常、標準管理規約67条のような規定に基づき差止請求を行うものと考えられますが、このような規定が不備である場合には、区分所有法57条等に基づき共同利益背反行為への対処としての請求を検討することになります。この場合、住居専用規定違反のみをもって「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法6条1項)といえるか(実際の住環境への悪影響などを考慮して判断する必要はないか)が問題となりますが、この点については肯定的に考えてよいと思います。住居専用規定は、その存在によって住宅専用マンションとしての住環境という共同の利益を保護するものであり、これに違反すること自体が直接的に共同の利益を侵害する行為になると考えられるためで(注34)す。52山野目章夫ほか編『マンション判例百選』(有斐閣、2022)122頁。専有部分の使用方法(事務所、民泊、サロン等)(注31)東京地八王子支判平成5年7月9日判時1480号86頁。(注32)東京高判平成23年11月24日判タ1375号215頁。(注33)東京地判令和元年5月17日ウエストロー・ジャパン登載(事件番号:平30(ワ)11526号)は、区分所有者が住宅として使用する傍らフラワーアレンジメント教室を開いていたという事案において、ホームページ上で募集を行うとともにレッスン料等を収受し、資格認定制度なども設けていたことから、不特定多数の者の来訪が想定される事業として教室が営まれていたと認定し、住居専用規定への違反を認めています。また、事例判断ではあるものの、標準管理規約12条1項と同文の規定について「マンションの住民らの平穏で静謐な居住環境を維持するために、本件マンションの用法を居住用に限定し、不特定又は多数人が出入りすることが想定される事業用として利用することを一律に禁止する趣旨の規定であると解するのが相当であり、平穏な用法あるいは主たる用法でなければ事業のために利用することを許容しているものとは解されない。」との解釈を判示しており、参考になります。(注34)佐久間毅「〈コラム〉区分所有者の共同の利益に反する行為に関する裁判例」

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