第4編 民法717条1項の「占有者」について、管理組合は「占有者」に当たるとする説と、「占有者」に当たらないとする説の両方があります。AQ 漏水被害を受けた区分所有者が、漏水原因は共用部分にある東京高判平成29年3月15日判タ1453号115頁以降は、管理組合は、民法717条1項の「占有者」には当たらないとする裁判例が何例も出ています。よって、このような最近の流れからすると、管理組合は、本問のようなケースで民法717条1項の責任に基づき損害賠償に応ずる義務はないと考えられます。ただし、別の法的根拠(民法709条不法行為に基づく義務)に基づき、管理組合が損害賠償義務を負う可能性はあります。民法717条1項は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止す管理組合の損害賠償責任解説1 民法717条1項の「占有者」キーワード【漏水】【民法717条1項】【工作物責任】【占有者】96こと、また、管理組合は共用部分を管理し占有しているゆえに、民法717条1項の「占有者」に当たることから、管理組合に対し、損害賠償請求をするとの通知が届きました。管理組合には、この請求に応ずる義務はあるのでしょうか。管理組合の損害賠償責任問69 民法717条責任損害賠償責任の問題
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