283マンション管理問題は「民民の問題」であり、自分たちとは関係ないとお考えの自治体担当者の方も多いのではないでしょうか。しかし、それは大きな誤解です。「二つの老い」が進むマンション管理問題において、行政は「当事者」となり得るのであって、積極的に関与することが望まれます。行政が当事者になった二つの事案をご紹介します。まず一つ目は、2020年2月に起こった逗子市崖崩れ事故です。これは神奈川県逗子市でマンションの敷地にある斜面が崩れ、斜面の下にある道路脇の歩道を歩いていた女子高校生が亡くなってしまったという大変痛ましい事故です。この事故においては、主として、区分所有者(管理組合)や管理会社の責任が問われていますが、県が適切な対応をしていれば防げていたはずであったとして、県の責任も問われています。二つ目は、2020年に行われた野洲市の行政代執行です。これは築年数約50年の全9戸のマンションについて、老朽化が著しく周囲への危険が生じているにもかかわらず、区分所有者が何ら対応しないため、やむを得ず市が行政代執行により解体したという事案です。市が負担した費用は約1億1800万円で、解体後に各区分所有者に約1300万円ずつ請求しましたが、行方不明の区分所有者もいるため、公金の全額回収は見込めない状況です。二つの事案からわかるとおり、両事案とも、もはや「民民の問題」ではなく、行政が「当事者」となっています。さらに、今後「二つの老い」が進行することは明らかです(問188参照)。「老朽化したマンション」は、当該マンションの居住者だけではなく、歩行者や周辺住民にも被害を及ぼすおそれがあります。敷地斜面だけではありません。外壁タイルやブロック塀なども人の生命を奪うリスクがあります。そのようなマンションを「高齢化した居住者」が適切に管理しなければならないことこそが、まさに「二つの老い」の難しさなのです。このような事態を踏まえ、2022年4月から国は「マンション管理計画認定制度」を開始しました。同制度によって、地方公共団体は、管理適正化指針や独自の指針に基づき、必要に応じて管理組合に助言や指導、勧告を行うことができるようになりました。我々は弁護士として、管理組合からのご相談、管理会社を通じた管理自治体担当者の方へ
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