2大きく5つに分け,時代背景と政策について整理する。1)⑴ 制定から1970(昭和45)年改正まで 現在の農地に関する法律は,戦後の農地改革を契機として,法制度の発展を遂げている。戦前の日本では,農地の45パーセントが,農民が地主から農地を借りて小作料を納めるいわゆる「小作地」であり,高額な小作料が農村の貧困の大きな原因となっていると指摘されていた。2) このことから,1952年の農地法制定時には,第1条の法律の目的は「この法律は,農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて,耕作者の農地の取得を促進し,及びその権利を保護し,並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し,もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」とされ,2009年の農地法改正まで農地法の目的として,自作農を原則とすることが掲げられた。 1950年代半ばから高度経済成長期を迎え,農業から他産業へ人材が流出し,農村人口の減少が顕著になったことを契機に,1962年の農地法改正により,構造政策として他産業に従事した離農者の農地を専業農家へ集積し,所有権移転により自作農の規模拡大を目指すため,農地の所有権移転の要件緩和や,農業生産法人制度の導入などを行い,農業従事者が他産業従事者並みの生活水準を確保できるような方策を展開した。 さらに,1968年には,高度経済成長期によって,人口や産業の急激な都市集中化への対策として,都市の無秩序な拡大を防止し,秩序ある発展を図ることを目的とし,都市計画法(昭和43年法律第100号)が制定され,都市部における土地利用や開発行為に対し一定程度の制限がなされた。 しかし,都市部にもなお農地は多く存在し,また開発規制のない農村部への無秩序な開発行為を規制する必要が生じたため,翌1969年に農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)が制定され,同年9月27日に施行された。第1章 農地に関する法律の変遷1)農林水産省ウェブサイト「農地政策をめぐる事情(平成19年1月)」2)清水徹朗「日本の農地制度と農地政策─その形成過程と改革の方向」農林金融60巻7号348頁
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