iはしがき 不動産が「農地」であるのか否かは不動産の実務に携わるものにとっては,注目すべき点であることは全国共通であろう。しかし,農地や農地に関する制度が抱える課題は地域ごとに大きく異なり,都市農地の存する地域にはその地域特有の課題があり,当該課題に対応するための制度も地域によって異なる。 都市農地は,新鮮な食物の供給という役割のみならず,防災機能,地域住民の交流,体験の場の提供,ヒートアイランド現象の緩和など,都市特有の様々な社会課題対応の役割も期待されている。 筆者らは,都市農地(生産緑地)の存する地域の住民である司法書士として,いわゆる「生産緑地2022年問題」と呼ばれる,制度開始当初に指定された生産緑地の多くが宅地化され,不動産市場に大きな影響を及ぼすのではないかという懸念(あるいは期待)を実務で目の当たりにしてきた。 実際に,2022年を迎えた際には,多くの生産緑地が特定生産緑地に指定されたことによって,当初想定されたような不動産市場に大きな影響を及ぼす事態には発展しなかったが,農業人口の減少,都市部への人口集中,農業のICT化など,都市農地を取り巻く環境は年々変化していることからも「生産緑地2022年問題」で言われていた「生産緑地の多くが宅地化されるのではないか」という懸念は,引き続き都市農地の存する地域特有の課題として,残り続けるだろうと推察している。 都市農地や生産緑地の制度を理解するにあたり,農地法や都市計画法等の法制度の理解は不可欠であることから,本書の第1編の農地概説では,農地や都市農地をめぐる各制度の位置付けや関係性を意識することを心掛けた。また,実務上,都市農地に関する様々な手続について検討する際には,不動産の価値が一般農地に比べ高額となることから税務の検討は必須となる。第2編の司法書士,行政書士である筆者らの実務解説に加え,第3編では税理士による税務面の解説を加えた。さらに第4編での事例解説も司法書士,税理士の両専門職でそれぞれ執筆することにより,実務家にはしがき
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