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3知財と法務(特許と契約)を場面や用途・目的に応じて,融合的に使いこなすことが事業価値の最大化に資する。これが,技術法務の基本的なコンセプトであり,2000年代前半から提唱されてきた1)。近時の20年,クローズドイノベーションからオープンイノベーションへ,オープンイノベーションの進化・変容,そして,デジタル技術の発展と,我が国の事業環境が大きく変化し,事業価値を最大化するための法律的な手法である技術法務も進化を続けてきた。本章では,オープンイノベーション化に伴って,進化してきた技術法務の考え方を紹介する。我が国のものづくり産業は,かつて,「ジャパン・アズ・ナンバー1」といわれ,世界を制するほどの競争力を有していた。1980年〜1990年代,イノベーションの先進事例は,自社の経営資源や自社での研究開発成果を製品化する「自前主義」体制を敷いていた。日本産業を牽引していた電機メーカーも,同様に,「自前主義」体制のもと,「ブラックボックス化戦略」2)なる知的財産管理を優先し,自社の基幹技術,基幹部品,製造装置などに関する技術・ノウハウの漏洩を防止することを重視し,そのため外部との取引を制限する戦略を採用していた(クローズドイノベーション)。しかし,1990年代以降,IT技術の急速な発展,グローバル化,製品の高度化・モジュール化,製品ライフサイクルの短期化,新興国企業を含めた競争の激化などの影響で,我が国の研究開発効率は急速に低下し,クローズドイノベーションは限界を迎えることになった3)。我が国では,1990年代後半から産学官連携の文脈で,大学等の研究機関の1 技術法務1.0(〜2000年前半)1)鮫島正洋「知的資本経営と技術法務の潮流」知財管理54巻2号181頁において,企業価値を高めるために,知財と法務をシームレスに融合して提供する「技術法務」なる新規な概念が紹介された。2)伊藤智久=木村康宏=山本史門「大企業によるベンチャー企業とのオープンイノベーション―情報通信・エレクトロニクス分野の事例から紐解く突破口」知的資産創造21巻10号6頁3)オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)編『オープンイノベーション白書 第2版』2頁(経済産業調査会,2018年)1 技術法務1.0(〜2000年前半)⑴ クローズドイノベーションからオープンイノベーションへ

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