16_オープン
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4技術を事業化したり,大企業の技術・知財を外に切り出して収益化するという目的のオープンイノベーションが推進されてきた。従来型の「自前主義」体制のもとでは,企業の知財部及び法務部の役割は,知財部であれば囲い込み戦略,法務部であれば取引企業等との取引契約戦略であり,画一的な業務が多く,各々独自に特殊スキルに特化して専門化を進めてきた。結果,各々の職務分担範囲は聖域化・縦割り化し,(専門実務能力は極めて高いものになったが)両者の関係は希薄なものとなっているケースが多かった。特許事務所(弁理士),及び法律事務所(弁護士)でも,同様の業務の専門化・分断化が起こっていた。しかし,本来,知財も法務も一つの事業目的を実現するためのツールのはずであり,これらは融合的一体的に提供されるべきであるものである。他者の技術により事業化を行ったり,自社の技術・知財を切り出して収益化につなげるオープンイノベーションの流れにより,そのような価値観を採用すべき必要性が高まっていた。そこで,「法務(契約など)と知財実務のシームレス化」「法務(知財を含む。)とテクノロジー・ビジネスの融合」を掲げた「技術法務」が生み出され,実務として実践され始めた4)。4)前掲注1・鮫島192頁⑵ 技術法務1.0(知財と法務のシームレス提供)COLUMN技術法務の生い立ちこの時代,「法律的な観点でのアドバイスにとどめ,ビジネスには口を出さない。」という不文律が弁護士業界には存在した。しかし,顧客が求めるのは法律事項にとどまらず,当該法律事項がビジネスにどのようなリスクをもたらすのか,そのリスクをどのようにすればヘッジできるのか,という点のはずである。このようなアドバイスは法律とビジネスを熟知した者にしかできないところ,専門部署(法務部)がある大企業にはこのような人材がいたかもしれないが,こと中小企業においては絶望的な状況であった。今にして思えば,インターネットの普及がこの不文律を崩すための主要因と

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