16_オープン
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ii施許諾できるのか,他の事業会社ともプロジェクトを進めることは制限されないのか,契約実務の視点からのアドバイスと細心の注意を払った上での契約書のドラフティングが必要になります。オープンイノベーションが成功すると,事業化の段階となります。事業会社に対して知財権のライセンスを出したり,類似・模倣ビジネスが登場したりすることもありますが,この段階ではビジネス的な戦略性と知財・法務の融合的な見識が必要になります。上述した様々な段階にかかる事象が,複数の事業会社とのビジネスにおいて同時多発的に生じるのがディープテック・スタートアップの現状だとすると,知財戦略と契約実務をボーダレスにこなすスタイル(=技術法務)でないと対処できない,というのが20年間をかけて得た筆者の結論となります。とは言っても,「知財戦略と契約実務をボーダレスにこなす」こと自体がまだ世の中に普及していない現状においては,「本当にそんなことができるの?」「技術法務ってどう進めるの?」という質問が後を絶ちません。2022年に出版した『第2版 技術法務のススメ』(日本加除出版)では,「技術法務」の基本的な理論を余すことなく解説したつもりでしたが,力不足だったようです。そこで,そのような疑問に答えるためにも,より実践的なケーススタディを登載した本書を刊行することにしました。本書は,本年(2024年)7月に20周年を迎える弊所の記念プロジェクトでもあり,その歳月は「技術法務」の歴史そのものでもあります。その間,30余名の仲間と巡り会い「技術法務」を追究してきました。本書では,そのような若手にもフィーチャリングすることによって,「技術法務」の担い手が育っていることをも世に示したいと思っています。末筆になりますが,本書の出版を快く引き受けていただき,短い日程の中で校正その他出版に向けた業務を進めていただいた牧陽子氏を中心とする日本加除出版の編集部,そして,忙しい仕事の合間をぬって本書の編集に多大な時間と労力を割いていただいた弊所・稲垣紀穂弁護士には,この場を借りて深く御礼を申し上げたいと思います。本書の出版をもって,「技術法務で,日本の競争力に貢献する」という弊所の社是を実現していきたいと考えています。2024年6月編集代表 鮫島 正洋

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