1 相続の根拠⑴ 学 説1)伊藤昌司〔相続の根拠〕民法講座7巻341頁は,相続の根拠に関する内外の学説を網羅的に紹介している。遠藤浩〔相続の根拠〕現代家族法大系Ⅳ1頁,中川=泉・相続法〔第4版〕9頁,鈴木・相続法講義〔改訂版〕342頁,二宮・家族法〔第5版〕308頁以下,相続法概説3頁,佐藤隆夫・現代家族法Ⅱ29頁〈勁草書房,1999年〉,内田・民法Ⅳ〔補訂版〕322頁2)川島・民法⑶118頁3)中川・民法大要下174頁 相続とは,自然人の法律上の地位を,その者の死後に,特定の者に承継させることをいう。その根拠をどのように考えるかについては見解が分かれている。1)ア 意思説 相続の根拠を個人の意思に求める見解で,私的財産制度における私的自治を前提に,遺言相続を原則とし,法定相続を無遺言相続と捉え,法定相続は被相続人の合理的な意思の推定であるとする。2)従来は,我が国では遺言相続が少なく,法定相続が原則的形態であるとする事実が,この説の説得力を弱めているとの批判があったが,遺言が増えつつある現状を踏まえると,そのようにいい得るかには疑問がある。イ 縦の共同体説 被相続人と相続人とは,世代を通じて縦の共同体を形成しており,この共同体の存在のゆえに,死者の財産は,彼の死後,その共同体の構成員に承継されるとする見解である。3)父祖代々世襲で同じ職業を営んでいる家族で,子が父の遺産を承継する相続に関しては適切な説明たり得る。しかし,現在では,縦の共同体の存在が顕著であるとはいい難く,また,第1節 序 節 1第1章 総 則第1節 序 節
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