判相1
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2 第1章 総  則4)中川=泉・相続法〔第4版〕11頁など5)鈴木・相続法講義〔改訂版〕346頁は,「血の代償」説以外はいずれも,相続の根拠について十分な説明をなし得ないとして,そこに血縁があるからだとする「血の代償」説の非合理的な説明が残らざるを得ないとする。6)中川=泉・相続法〔第4版〕11頁。佐藤隆夫・現代家族法Ⅱ42頁〈勁草書房,1999年〉,内田・民法Ⅳ〔補訂版〕324頁は基本的にこれを支持する。⑵ 学説の現代的状況 これらの各説のうち,共同体説が通説的見解とされるが,各学説による一元的説明では相続の根拠を十分に説明することは困難であるとして,現代における相続権の根拠を,相続人に属していた潜在的持分の払戻し,有限的家族的共同体の構成員への生活保障,一般取引社会からの権利安定の要請に求める多元的説明をする見解も有力である。6)もっとも,各説による直系尊属,配偶者,兄弟姉妹による相続を説明しきれないとの批判がある。ウ 共同生活説(横の共同体説) 人々は,夫婦,親子で共同生活し,互いに扶養し,互いに財産の形成に貢献しあっているから,ある人が死亡した場合には,その者の財産はその者と共同生活をしていた者たちに与えられるとする見解である。4)この見解は,夫婦,親子が共同生活をして,蓄財に努め,共通の子を養育しているという典型的な小家族において,夫=父が死亡して,配偶者と子が相続するという状態を適切に説明し得る。しかし,現行相続法は,相続人の資格として被相続人と一定の身分関係があることのみを要求し,両者間の共同生活の有無,相続人の資力,資産形成に対する相続人の貢献の有無程度などは原則として問題とせず,したがって,別居中の配偶者も,独立生計を営む子も,同居したことがない嫡出でない子も相続権を有することをよく説明し得ないとの批判がある。エ 血の代償説 相続の根拠を被相続人と相続人との血縁関係に求める見解である。5)血が親から子へ,子から孫へと伝わるように,財産もまた,血縁関係にある者に伝わっていくとする考え方で,最も素朴な相続観である。配偶者相続権を説明できないとの批判がある。

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