2 相続法の沿革7)フランス民法は,人事編,財産編,財産取得編に分かれ,人,物,行為という分類に由来した伝統的な三編構成であるが,起草者ボアソナードは,財産取得編が広範囲にすぎるとして,このような,独特な五編編成とした(小柳春一郎〔民法典の誕生〕民法典の百年Ⅰ全般的観察9頁)。⑴ 旧民法 旧民法(明治23年法律98号)は,人事編,財産編(物権と債権総論,不法行為),財産取得編(契約法と相続法),債権担保編(物的担保としての担保物権と人的担保としての保証等),証拠編(時効その他)という編成であり,財産取得編13章以下に相続に関する規定が置かれていた。7)その内容は,家督相続と遺産相続の二本立てであって,いずれについても,嫡出長男子優先の単独包括相続制を採用していた。⑵ 明治民法 法典論争の結果施行が延期された旧民法を修正するという形式で,明治民法が制定されたが,民法相続編は,初め同親族編とともに,明治31年法律9号として公布された上,先に公布されていた明治29年法律89号民法総則編,同物権編,同債権編と一括して,明治31年7月16日に施行された。このように明治民法は相続法を財産取得編に含める旧民法の構成を採用せず,いわゆるパンデクテン方式を採って第5編を相続に当てた。相続法を民法各編の最後に置いた理由につき,起草委員穂積陳重は,第175回法典調査会において,相続法に関する諸外国の法典編纂方法を紹介した上,「我邦ノ民法ニ於ケル相続編ト云フモノハ,財産相続計リデアリマセズシテ,所謂家督相続ナルモノガアリマスカラシテ,別シテ財産関係及ビ親族関係ノ規定ガ総テ定ツタ後デナクテハ置クコトハ出来ナイト云フコトニ為ルデアリマセウ」と述べ,また,相続を財産取得編中に規定した旧民法の編纂方法につき,「家督相続即チ戸主権相続ト云フウモノハ,余程重モナ条文解釈上の差異は少ないと思われる。第1節 序 節 3
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