判相1
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るという観点から,法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を設けたものである。〈第1 相続法改正〉ア 配偶者の居住権を保護する方策 配偶者については,その居住権を保護する必要性が高まっている。そこで,配偶者の居住権が保護するための改正がなされた。ア 配偶者居住権の創設 被相続人の配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割,遺贈又は死因贈与により,その建物を使用及び収益する権利(配偶者居住権)を取得することができる(民1028条ないし1036条,554条)。 配偶者の一方が死亡した場合に,他方の配偶者は,それまで居住してきた建物に引き続き居住することを希望することが多く,特にその配偶者が,高齢者である場合には,住み慣れた居住建物を離れて新たな生活を始めることは精神的にも肉体的にも大きな負担になる。また,相続開始の時点で,配偶者が高齢のため自ら生活の糧を得ることが困難である場合も多くなってきていることから,配偶者については,その居住権を保護する必要性が高まっている。そこで,配偶者の居住権を保護するための改正がなされた。イ 配偶者短期居住権の創設 配偶者は,相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日などまで無償で居住する権利(配偶者短期居住権)を有する(民1037条ないし1041条)。イ 遺産分割に関する見直しア 特別受益の持戻し免除の意思表示の推定 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,他の一方に対し,その居住の用に供する建物又はその敷地(居住不動産)について遺贈又は贈与をしたときは,民法903条3項の持戻し免除の意思表示があったものと推定し,遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要として(民903条4項),結果として贈与等を受けた配偶者は,第1節 序  節 11

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