判相1
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12 第1章 総  則最終的により多くの財産を取得することができることになる。イ 可分債権の遺産分割前の払戻しを可能にするための方策として,保全処分の要件の緩和及び仮払い制度等の創設① 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策(家事200条3項) 相続債務の支払や生活費の支出が必要であるなどの事情により,共同相続人のうち,遺産に属する預貯金の払戻しをする必要がある場合には,その者の申立てによって,遺産に属する預貯金をその者に仮に取得させることができる(家事200条3項)。② 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策(民909 遺産である預貯金の払戻しには共同相続人全員の合意が必要であるが【447】,その結果,相続債務の支払や生活費の支出が必要であるなどの事情により,預貯金を遺産分割前に払い戻す必要がある場合に支障を来したことから,共同相続人の資金需要に迅速に対応するため,各共同相続人が,遺産分割前に,裁判所の判断を経ることなく,一定の範囲で遺産に含まれる預貯金を行使することができる制度が創設された(民909条の2)。ウ 一部分割についての明文化(民907条) 一部分割を一定の要件の下に許容することが明確にされた。エ 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の取扱い(民906条 相続が開始し,現実に遺産分割がなされるまでに,かなりの期間を要する例が少なくなく,その間,遺産を構成する個々の財産に変動を生ずることがある。民法906条の2は,この遺産の変動のうち,相続開始後に一部の共同相続人又は第三者が遺産に属する財産を処分した場合について,他の共同相続人の全員の同意(なお,処分した共同相続人の同意は不要である)によって,処分された共有持分があたかも遺産分割時に現存したものとして遺産分割の対象として扱い,各共同相続人の具体的相続分を算定して,処分した当該相続人に当該共有持分を取得させて遺産を分割し,処分した共同相続人に具体的相続分以上の利益の確保を許さず,条の2)の2)

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