判相1
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共同相続人間の公平を図る制度である。ウ 遺言制度に関する見直しア 自書によらない財産目録を添付する場合の規律(民968条2項) 自筆証書遺言は,全文,日付及び氏名を自書し,これに押印しなければならないが,遺言者が多数の遺産を所有し,それを遺言書に記載しようとする場合,その負担は相当重いため,自筆証書遺言をより使いやすいものとすることによってその利用を促進する観点から,自筆証書遺言に相続財産等の目録を添付する場合には,その目録については自書を要しないこととして,自筆証書遺言の方式を緩和することとした。もっとも,偽造・変造を防止する観点から,遺言者は,自書によらない目録の各頁に署名押印しなければならないこととされた。イ 遺贈の担保責任(民998条) 改正前民法では,遺贈の担保責任については,特定物と不特定物とを区別した上で異なる規律を設けていた(改正前民998条,1000条)。平成29年5月に成立した改正債権法では,贈与の担保責任に関する規律の見直しが行われ,特定物と不特定物とを区別しないこととされた。そこで,相続法の改正においても,贈与と同じく無償行為である遺贈についても,贈与に関する規定の内容を踏まえて,遺贈義務者は,遺贈の目的である物又は権利を,相続開始の時の状態で引き渡し,又は移転する義務を負うが,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従うこととされた(民998条)。ウ 遺言執行者の権限の明確化等 改正前の民法では,遺言執行者の権利義務等に関する一般的・抽象的な規定はあったが(改正前民1012条),遺言執行者は誰の利益のために職務を遂行するか,特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)における遺言執行者の権限などが明確でなかったため,遺言執行者の法的地位,遺言執行者の権限と遺贈の履行義務との関係,特定財産承継遺言における遺言執行者の具体的な権限の内容等が明確にされた。① 遺言執行者の法的地位の明確化(民1012条1項,1015条) 改正前の民法1012条1項は遺言執行者の一般的な権利義務を包括的に第1節 序  節 13

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