判相1
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【118】 明治民法966条の家督相続回復請求権の消滅に関する20年の期間は消滅時効であり,この消滅時効は相続権侵害の事実の有無にかかわらず相続開始の時から進行する。 前記法条〈筆者注:明治民966条,現行民884条〉によると相続開始の時をもつて20年の時効の起算点としているのであるから相続開始後相続権の侵害せられるまでの期間は家督相続回復の請求権はまだ発生していないのであつて従つてこれを行使することはできないに拘らずその消滅時効は相続開始の時から進行を始め右の期間は当然に時効期間に算入せられることになるのである,そしてこのことは相続権の侵害が相続開始後20年の期間内に行われた場合に限るべきではなく,相続権の侵害が20年の期間後に行われた場合も亦同様に解すべきである……。⑶ 取得時効及び消滅時効との関係ア 取得時効 相続回復請求権がいまだ消滅していない段階で,真正相続人から相続回復請求を受けた不真正相続人は,個々の財産につき取得時効の完成を主張して,この請求を拒否することができるか。不真正相続人の相続財産中の個々の財産についての取得時効と相続回復請求権の消滅時効との関係である。通説は,両者が格別に進行することを認めて差し支えないとする。しかし,判例は,取得時効を定めた民法162条は時効に関する一般規定であり,相続回復請求権の消滅時効を定めた民法884条はこれに対する特別規定であるから,民法162条に優先するとして,相続回復請求権が時効によって消滅するまでは,取得時効の完成による所有権の取得は主張できないとする【119】【120】。なお,その後の判例には,不真正相続人の特定承継人は前主の占有期間と自己の占有期間を併せて取得時効を完成させることができると判示するものがあり【121】,この判例によって【120】の判例は実質的に変更されたのではないかとの指摘がある。 下級審判例では,【122】は,大審院以来の判例に従い,民法884条は最判昭和23年11月6日民集2巻12号397頁第4節 相続回復請求権 123

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