判相1
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【119】 相続回復請求については,民法966条(現行民884条)の特別時効の規定によるものであって,一般時効である民法162条の適用はない。【120】 家督相続人が相続回復請求権を行使できる間は,表見相続人は相続財産を時効取得し得ない。【121】 表見相続人の特定承継人は前主の占有期間に自己の占有期間を合算して取得時効を援用し得る。124 第1章 総  則特殊な時効期間であるとして,相続人が相続回復請求権を行使できる間においては,たとえ表見相続人において相続財産に属する不動産を占有することがあっても,時効によってその所有権を取得することはできないとした。これに対し,【123】は,民法884条は,法律関係の早期確定という観点から一定の限られた者に対して特別な保護を与える規定であって,同条以外の他の規定により法律関係の早期確定が図られることを排除する趣旨のものではないとして,相続回復請求権が民法884条の消滅時効にかかる前においても,相続権の帰属が争われている法律関係に関して,取得時効は成立し得るとし,【120】は,家督相続人の法的地位の安定という要請が考慮された可能性があることから,先例としての意義を有すると解するには疑義があると判示した。 相続回復請求権の消滅時効は相続関係を早期に安定させるためであるとすれば,相続回復請求権が民法884条の消滅時効にかかる前であっても,不真正相続人の特定承継人は時効取得を主張できると解すべきであり,後者を支持したい。イ 消滅時効 取得時効の場合と同様に,相続回復請求権が民法884条の消滅時効にかかる前においても,債権の消滅時効が完成するかという問題がある。【123】は,取得時効の場合と同様な理由でこれを肯定する。大判明治44年7月10日民録17輯468頁大判昭和7年2月9日民集11巻192頁

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