判相1
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【122】 相続人が相続回復請求権を行使できる間においては,たとえ表見相続人において相続財産に属する不動産を占有することがあっても,時効によってその所有権を取得することはできないとされた事例 相続回復請求権については民法884条において特殊な時効期間が規定されているから,相続人が相続回復請求権を行使できる間においては,たとえ表見相続人において相続財産に属する不動産を占有することがあっても,時効によってその所有権を取得することはできないと解するのが相当である(大審院明治44年7月10日判決・民録17輯468頁,大審院昭和7年2月9日判決・民集11巻3号192頁参照)。【123】 相続回復請求権が民法884条の消滅時効にかかる前においても,相続権の帰属が争われている法律関係に関して,取得時効や債権の消滅時効は(相続回復請求の相手方の善意・悪意等を問わず)成立し得るとされた事例東京地判令和3年1月14日LLI╱DB このように,民法884条に関して,その趣旨を,相続に関わる法律関係の早期確定にあると捉えた上で,その適用場面を,同条による保護を受けるに値する者(善意・無過失で表見的な法律関係を形成した者)に限定するという理解に立つ場合には,同条は,法律関係の早期確定という観点から一定の適格者のみを特別に保護する規定であると位置付けられる。そうであるならば,民法884条が定める期間(短期5年・長期20年)の経過前に,相続権の帰属が争われている法律関係に関して,取得時効や債権の消滅時効が完成する場合において,同条の存在により,取得時効等の他の規定の適用が否定されるものと解すべき理由はないというべきである。民法884条は,あくまでも,法律関係の早期確定という観点から一定の限られた者に対して特別な保護を与える規定であって,同条以外の他の規定により法律関係の早期確定が図られることを排除する趣旨のものではないからである。…(中略)…大判昭和13年4月12日民集17巻675頁東京地判令和2年1月16日LLI╱DB第4節 相続回復請求権 125

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