2 第3章 相続の効力1) 「昭和55年法律第51号による民法の一部改正」の国会審議における,衆議院法務委員会での法務大臣による法律案趣旨説明では,「最近の家族関係におきまして,いわゆる核家族化が進んだことと子の数が減少したことによって家族構成にかなりの変化を生じていること,及び婚姻生活における配偶者の貢献に対する一般の評価が高まり,これを相続に反映させるべきであるとする意見が国民の間に有力となってきたこと等にかんがみ,相続分を改定することにより配偶者を優遇しようとするものであります。」とされている。改正民法及び家事審判法規に関する執務資料15頁。2) 起草委員穂積陳重は,法典調査会民法議事速記録7巻558頁において,「同親等ノ者ノ間ニ愛情ガ多少アルト云フコトヲ推測スベキモノデアリマセヌカラ,其相続分ガ相均シイト云フコトハ勿論ノコトデアリマス」と述べている。の2に引き上げられ,直系尊属が3分の1に引き下げられた。配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合,改正前は,配偶者が3分の2,兄弟姉妹が3分の1であったが,改正により,配偶者が4分の3に引き上げられ,兄弟姉妹が4分の1に引き下げられた。 この改正の背景には,核家族化の進行に伴い,子の数が減少するなど,相続制度の基礎となる家族構成が変化し,また,女性の社会的地位の向上に伴って,婚姻生活における配偶者の貢献を評価すべしとの要請が強くなってきたことなどがあるとされる。1) なお,附則2条により,改正法が適用されるのは,昭和56年1月1日以後に開始した相続(被相続人の死亡)に関してであることに注意しなければならない。したがって,昭和55年12月31日以前に開始した相続に関しては,改正前の規定が適用されることになる。⑵ 法定相続分の内容 我が国の相続制度は配偶者相続人と血族相続人との共同相続制度を採用しているので,それぞれの法定相続分は共同相続する相続人の種類によって異なる。ア 子と配偶者が相続人である場合ア 子と配偶者 子の相続分は2分の1,配偶者の相続分は2分の1である。 子は第1順位の相続人であるが,子が数人ある場合には全員で2分の1を取得し,各人の間で均分する(民900条4号本文)。2)子については,男女の別,戸籍の異同,実子・養子の別,国籍の有無を問わない【例1】。
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