判相2
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5) 西原道雄〔非嫡出子の相続分を定めた民法900条4号但書の合憲性〕私法判例リマークス5号98頁子の相続分と同等にするとされていたが,その頃実施された世論調査の結果によれば,反対の意見が強く,また一般の国民感情も,嫡出でない子と嫡出子との区別をなくすことを疑問視する声が多いこともあって,結局改正は見送られた経緯がある。しかし,「児童の権利に関する条約」において,児童に対する差別の禁止がうたわれ,諸外国の立法をみても,スウェーデン,イギリス,フランスにおいて,近時,嫡出でない子の相続分を嫡出子のそれと同等にする改正がなされており,嫡出でない子の地位を嫡出子のそれと同一にするのが世界の潮流であるといえよう。b 最大決平成25年9月4日【1】までの判例 学説では,改正前の民法900条4号ただし書前段を合憲とし,立法論としては議論の余地があることを指摘するものが最も多かったとされる5)が,1990年代に入ると,下級審の裁判例において,この問題を取り上げる判例が続いたが,合憲違憲で判断が分かれた。最大決平成7年7月5日民集49巻7号1789頁は,民法900条4号ただし書前段の規定の立法理由は,嫡出でない子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより,嫡出でない子をも保護しようとしたもので,法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものであること,民法が一夫一婦制による法律婚主義を採用している以上,この立法理由にも合理的根拠があり,立法府の裁量判断の限界を超えていないとして,同規定は憲法14条1項に違反しないとした。その後,同旨の最高裁判決が続いた。 なお,平成8年2月26日法制審議会総会で決定された「民法の一部を改正する法律案要綱」では「嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分と同等とするものとする。」とされていた。c 最大決平成25年9月4日【1】 【1】は,前掲最大決平成7年7月5日を変更し,嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1と定める民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していたこと,第4節 相 続 分 5

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