判例先例相続法Ⅰ遺産分割(平成6年),Ⅱ遺言(平成8年)を刊行したところ,幸いにも法律実務家を中心に好評をもって迎えられた。その後,相続法の分野において,法改正が行われたほか,最高裁を中心に新判例が続々とあらわれたことなどもあり,全訂版を刊行することとした。 この全訂版は,以下の点で,旧版と異なるものとした。・旧版はⅠ及びⅡの全2巻であったが,全訂版はⅠないしⅣからなる全4巻とした。全4巻の構成は,旧版の各巻をそれぞれ2巻に分かったものであるが,旧版における遺産分割及び遺言の副題は各巻の内容に副わないこととなったので,これを付さないこととした。・聴覚・言語機能障害者の公正証書遺言に関する平成11年の法改正,民法の現代語化に関する平成16年の法改正に対応した。・旧版後の判例先例を新たに搭載した。・体裁として,読みやすさを考慮して文末注から脚注に改め,判例先例の位置を本文と近づけ,新たに索引を加えたほか,文献の引用に正確さを期した。これに加えて,旧版の叙述の方針も,次のように,大きく改めた。・判例先例によって実務における事件処理の現状を紹介するのが本書の役割であることから,判例先例の存在しない部分については叙述を控えたが,全訂版においては,そのような場面においても著者の認識している範囲でこれを記述することとした。そのため,私見を述べるという論文的な叙述が,旧版より増えることとなった。・実務上の問題点の把握が本書の趣旨の一つであるが,そのためには条文解釈の正確性を期す必要があり,それに資すると考えられる範囲で,立法及び法改正過程における議論を紹介することに努めた。・実務処理における考え方の相違点を,実務,学説それぞれの間,あるいは実務と学説との間においても,旧版時より多く指摘せざるを得ないこととなり,その場合には,私見を述べる場面を増やさざるを得なかった。全訂版はしがき iii全訂版はしがき
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